英文では、よく『受動態』と『能動態』の話が出ると思います。
実は、日本語の文章でも『受動態』と『能動態』の違いを使い分けることは重要です。
もし、間違った使い方をしていると、読みづらい文章になってしまいます。
受動態とは?
『受動態』とは、動作を行うものが主語にならず、行為を受ける対象が主語となる特殊な文法のことです。
そのため、『受動態』を『受身(うけみ)』『被動態(ひどうたい)』とも言います。
例えば、「猫の尻尾は、私に踏まれた」といった文章は『受動態』で書かれたものになります。
能動態とは?
『能動態』とは、主語と動詞の関係を明確に表記した文法のことです。つまり、一般的な文章が『能動態』といえるでしょう。
例えば、「私は、猫の尻尾を踏んだ」といった文章は『能動態』で書かれたものになります。
受動態と能動態の違いと意味
『受動態』と『能動態』の説明からも分かる通り、これらの違いは動作が受け身になっているかどうかです。
どちらも文法なので、主語が変動することはありません。しかし、『受動態』『能動態』の文章では、読み手の印象がまるで違います。
例1
「私は、猫の尻尾を踏んだ」
例2
「猫の尻尾は、私に踏まれた」
例1だと、内容がスムーズに入ってきます。この例文は短いので気づきにくいですが、事の成り行きを明確に把握することができる文章といえるでしょう。
そのため、『能動態』で書かれている文章には説得力が生まれるのです。
一方、例2でも意味は通じますが、『猫の尻尾』がクローズアップされてしまい、『誰』が不明確になりやすいです。
そのため、『受動態』で書かれている文章は内容がぼやけやすいのです。
このことからも分かる通り、相手に内容を伝える文章を書くのなら、『能動態』で書かれた文法を用いる必要があります。
では、『受動態』は必要ないのでしょうか?
いえ、そうではありません。『受動態』を使って受け身の文章を用いる必要がある場面もあるのです。
例
「このサプリメントには、ダイエット効果がある」
「このサプリメントには、ダイエット効果が期待されています」
このように、文章の後ろに『~される』とつけることでも『受動態』となり、内容をぼやかすことができます。
例文の場合は『ダイエット効果』が本当かどうか定かではないとき、『受動態』を用いて内容をぼやかしたほうが良いのです。
そのため、伝えたい意味や内容によって『受動態』と『能動態』を使い分ける必要があるのです。
受動態と能動態の日本語を例文で解説
それでは、日本語の例文で『受動態』『能動態』を解説していきます。
例
「大丈夫です。明日のテストは100点満点が予想されます」
中学生の息子が母親に約束した会話のようですが、こんなことを言われても「本当に大丈夫?」と首を傾げてしまいます。
『大丈夫』と断言しているのに、『予想されます』と『受動態』にしてしまうと、説得力がまるでありません。
例
「大丈夫です。明日のテストは満点です」
相手を説得する場合は、例文のように『能動態』で書いたほうがしっくりきます。
なお、『100点』も『満点』も同じ意味なので、今回は片方を取ることでストレートな文章にしてみました。
例
バスガイドは振り返ると、後ろに見える泉を指さした。「この泉は、千年前に龍が棲んでいたんです」
本当に龍が棲んでいたのなら、とんでもない大スクープです。
恐らく、このバスガイドは伝説として語り継がれている逸話を説明しているはずです。
それなら、『受動態』を用いる必要があります。
例
「この泉には、かつて龍が棲んでいたとされています」
これなら、『受動態』としての役割をしっかりとなしていますね。
例
僕が立ち上がると、急に攻撃した
はて、どうしたことでしょうか。『僕』が急に攻撃したのか、誰かに攻撃を指示したのかも分からない文章です。
『受動態』を使わないばかりに、文章としての意味が通じなくなっているのです。
例
「僕が立ち上がると、急に攻撃された」
『受動態』にするだけで文章の意味が通じるようになりました。
この例文からも分かるとおり、私たちは『受動態』『能動態』を知らないうちに使い分けているのです。
日本語として意味が通じない場合、『受動態』『能動態』の使い方を疑ったほうが良いのです。
まとめ
『能動態』で文章を書くことで、内容を明確に表すことができます。
そのため、相手に伝えるときには『能動態』の文章で書くようにしましょう。
一方、『受動態』の文章を用いることで、内容をぼやかすことができます。
このおかげで、事実が明確ではないものを表現する文章を書くことができるのです。
そして、『受動態』は自分でも気づかぬうちに使っていることが多い文法でもあります。
『~した』を『~された』と変えるだけでも『受動態』となりますので、読みやすい文章を意識して書くだけでも『受動態』と『能動態』を使い分けているのです。