普段、小説は読みますか?

 

いつの時代に書かれた小説であれ、名作なら冒頭を読んだだけで世界観に引き込まれ、どんどんページを読み進めることができると思います。

 

反対に、書店の人気コーナーに並んでいるはずなのに、何度読み返しても意味が通じず、最後にはめくるのをやめてしまう小説もあるでしょう。

 

この違いは、作家が生み出したリズム感の影響です。

 

人それぞれに合ったリズムが存在するため、人気作家が書いた小説でも読みづらいことがあります。

 

しかし、リズム感がまったくといって皆無の文章は、満場一致で読みづらいので、基本的なリズムのつけ方だけは覚えておきましょう。

 

語尾や単語を揃えるとリズム(テンポ)が良くなる

文章のリズム感とは、つまりはテンポが良い文章を指します。

 

音楽を聴くと気分が乗ったりするのは、心地よいテンポに心が踊るからです。

 

文章にもテンポをつけることで、読みやすいリズムを生み出すことができます。

 

まず、文章でテンポに影響するのは語尾です。

 

語尾と読みやすさの関係について説明しましたが、もっと詳しくいえば、語尾を揃えることでテンポを一定に保つ役割があるのです。

 

 

例文

「僕の言っていることは正しいのだ。しかし、誰も分かってくれないのです。犯人はこの中にいるはずである」

 

 

話者の主張が正しくても、こうまで口調が変わってしまっては、誰も信用しなくなるのは当たり前の話ですね。

 

登場人物が無実を主張するなら、語尾はすべて敬語で統一したほうがいいに決まっています。

 

 

例文

「僕の言っていることは正しいです。しかし、誰も分かってくれません。犯人はこの中にいるはずなのです」

 

 

さきほどの文章を読んでいると、語尾が違う真ん中で突っかかってしまいます。

 

しかし、文章の語尾を統一すると一気に読めたと思います。

 

これは、文章の語尾が統一されたことでテンポが生まれた影響です。

 

他にも、単語を統一することでもテンポを良くすることができます。

 

単語を統一するとは、『表記ゆれ』を正すことを意味します。

 

 

例文

私は、その光景を見守ることしかできなかった。岸壁の上に大きな麒麟が姿を現し、まるで威嚇しているかのように、天に向かって前足を振り上げた。その勇ましい姿に引き寄せられたのか、森から動物たちがぞろぞろと集まってくる。キリンを囲むように彼らは並ぶと、天に向かって叫び始めた……。

 

 

はて、どうしたことでしょうか。空想上の生き物『麒麟』の話かと思いきや、途中で首の長い『キリン』が登場して来ましたね。

 

もちろん、この書き手は『キリン』=『麒麟』として書いているようです。しかし、前文に『動物たち』と表現しているため、ここでカタカナ表記の『キリン』を使ってしまうと、どうしても動物のほうを連想してしまうのです。

 

このように、『表記ゆれ』はときとして意味が通じなくなるため、文章のテンポを悪くしてしまいます。

 

これでは、全体のリズム感を表現するにはほど遠い話です。

 

まずは、しっかりと『表記ゆれ』を正し、文章に使う単語を統一しましょう。

 

リズムの良い文章は前後の意味が通じる

文章とは、文が連なってできるものです。

 

つまり、一つの文で終わりではなく、前後の文も意味が通じるように書く必要があります。

 

これは、文章のリズムにも影響を及ぼすため、デタラメに書き進めてはならないのです。

 

 

例文

酷い戦争だった。これでは勝ったとしても、未来の子供たちに残せるものはない。

兵士のままでは、この現状は変えられないかもしれない。いっそ、政治家にでもなって、戦争が起こらない国を作りたいものだ。

記者どもがうるさくて本当にかなわない。たかだか百万の話で、何をそんなに騒ぎ立てることがあるのだろうか。

この国が平和なのは、私たちのおかげなのだ。百万でも足りないぐらいだ。

 

 

平和を願う青年が腐敗した政治家になってしまうストーリーのようですが、読んで見てどう思ったでしょうか。

 

三行目で意味が通じないと感じたら正解です。

 

この書き手は、前半の内容に伏線を盛り込んでいるから、後半でそれが活きてくると勘違いをしているようですが、実際はまるで意味が通じません。

 

この二行目と三行目の間は、原稿用紙で百枚分の内容を書くことができるからです。

 

その内容をすべて切り取り、いきなり政治家になった話をされても、読み手は面食らってしまいます。

 

どうしてもそこだけの内容を書きたい場合は、段落を分けてしまったほうが良いですね。

 

このように、文章の内容に繋がりがなければ、リズムの問題ばかりか、意味が通じずに読めなくなってしまうのです。

 

例文

ひまわりが咲いている。彼女の名前も『ひまわり』だった。

お腹が空いた。僕は彼女を呼び、ドライブの続きをした。

 

 

登場人物である『僕』はロマンチストかと思いきや、単なるお腹を空かせた『僕ちゃん』だったようです。

 

『彼女』の名前を説明したのなら、『ひまわり』とつけられた由来でも説明すべきです。

 

それを飛ばして話を進めようとすると、意味が通じなくなるのは当たり前です。

 

これでは、文章にリズム感が生まれるはずもありません。

 

 

例文

ひまわりが咲いている。彼女の名前も『ひまわり』だった。

祖父につけられたらしいが、彼女は多くを語らなかった。

しかし、ひまわり畑を駆け回っている彼女を見ていると、その名前が気に入っていることは聞かずとも分かる。

「ねえ、そろそろ行きましょうよ」

彼女にそう言われ、僕は頷いた。確かに、お腹も空いてきた頃だ。

 

 

さきほどの文章に比べ、前後の意味が通じるようになりました。

 

そのおかげで、一定のリズムで読み進めることができると思います。

 

意味さえ通じれば、意識しなくても文章にリズムは生まれてくるのです。

 

リズムは文体で決まる

一般的に文体とは、文字のフォントのことです。

 

しかし、文学における文体とは作品全体を指す言葉であり、それはすなわちリズムであると考えられています。

 

分かりやすくいえば、気難しい学者が文章を書けばお堅い文体となりますし、恋する乙女が文章を書けばロマンチックな文体となるわけです。

 

どの文体も日本語で書かれているので読めないわけではありませんが、その独特なリズム感についていけない方は多いはずです。

 

 

例文

記録書には記されているが(この場合は信書の話だが)、王族の呪われた伝説(すなわち、中世の終わり頃)が民衆を苦しめているのである。その経緯は、王家だけに伝わる神話(聖書『智慧の真理』を参照)が原因のようだが、本当のところは分かっていない。

 

 

本当に分かっていないのは、この文体がどれほど読みづらいかです。

 

この書き手は、予備知識を文章に入れたいようですが、その情報が多すぎて文章の流れを悪くしています。

 

こんな文章が永遠と続いてしまうと、読み手は本を閉じたくもなります。

 

 

例文

「あのーこれどういう意味ですかwww ちゃんと日本語で書いてもらってもいいスかwww 若者にも分かるようにお願いしますねwwwwwwwwww」

 

 

日本語で書いて欲しいと思うのは、こちらのほうですね。

 

インターネットユーザー同士なら読みやすいのでしょうが、ネットの書き込みに馴染みのない世代から見れば意味不明だと思います。

 

この例文からも分かるとおり、特徴が強すぎる文体はリズムがつかみにくいのです。

 

まとめ

文章に一定のリズムを生み出すことができれば、読み手はスラスラとページをめくることができます。

 

心地よいリズムを文章につけるのなら、まずは基本的な部分を心がける必要があります。

 

  • 文章の語尾を統一する
  • 『表記ゆれ』を統一する
  • 文章の前後を通して読んでも意味が通じるようにする

 

そして、専門用語や若者言葉などで書かれた文体はリズムを悪くしますので、誰でも読みやすい文体で書くことを心がけましょう。