『起承転結』という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。
しかし、その意味を正しく理解している方は少ないようです。
『起承転結』の使い方を知っていれば、プレゼンや報告書のようなビジネスシーンで利用することもできます。
『起承転結』のそれぞれの意味がどういうものなのか、簡単に解説していきます。
起承転結とは?それぞれの意味を簡単に紹介
起承転結とは、簡単にいえば物語の構成を意味する言葉です。
物語には、必ず始まりがあり、そして終わりがあります。
その過程で場面展開を行い、読者を物語の世界に引き込む工夫が必要となります。
その書き方こそ、起承転結なのです。
それぞれの意味を読み解くことで、どのように物語を構成すれば良いのかが分かるわけです。
まず、起承転結の『起』は始まりを意味します。
物語がどのように始まるのか、冒頭で解説するというわけです。
起承転結の『承』は出来事を意味します。
物語がどのように動き出すのか、きっかけとなる内容が必要となります。
起承転結の『転』は転換を意味します。
『承』の出来事を経て、物語がどのように転換されたのかを書き出します。
つまり、『承』と『転』は表裏一体となりますので、内容が繋がっていなければなりません。
例えば、『桃太郎』なら『承』で桃から男の子が生まれるわけですが、いきなり『転』で浦島太郎が玉手箱を貰うシーンが登場してしまうと、読み手は「え、桃太郎はどこへ行った?」と面食らってしまうわけです。
もし、どうしても浦島太郎を出したいのなら、『承』の時点で登場させておく必要があるのです。
最後に、起承転結の『結』は結末を意味します。
物語は、完結してこそ意味があります。クライマックスの出来栄えによって、作品の評価は大きく異なります。
『桃太郎』で主人公が鬼退治しなければ、桃から生まれてきた意味がありません。
浦島太郎が玉手箱を開けなければ、亀を助けた意味がなくなってしまうのです。
なので、必ず『結』はしっかりと表現するようにしましょう。
起承転結の比率
起承転結には、正しい比率が存在します。
それは、『起』が10%、『承』40%、『転』40%、『結』10%という黄金比です。
これが必ずしも合っているわけではありませんが、起承転結のベースとして考えて良いです。
少なくても、『起』『結』は『承』『転』より少なくてはなりません。
さきほど、『結』が物語には重要と言いましたが、内容を長々と膨らませる必要はありません。
主人公が鬼を退治しに行くストーリーなら、その鬼を退治したのか、和解したのかという結論が重要であり、一から十まで解説しなくても良いのです。
また、『起』が長すぎるのもいただけません。
その理由は、映画『スターウォーズ』の冒頭に流れるオープニング・クロール(あらすじ)を思い出してもらえると分かりやすいと思います。
エピソード4だと、こういったオープニング・クロールが流れます。
例文
『時は内戦期。秘密基地から出撃した反乱軍艦隊は、銀河帝国に対し初めて勝利を収めた。戦闘の最中、反乱軍のスパイは、惑星を丸ごと破壊する能力をもつ帝国の最終兵器デス・スターの設計図を盗み出した。銀河皇帝の追っ手が迫る中、レイア姫は銀河を救う秘密計画を手に、母星へと急ぐ……』
この内容は、つまりは起承転結の『起』の要約にあたります。
映画館でこの文字を眺めていると、およそ一分もかからないはずです。
もし、これが五分に構成されたオープニング・クロークだったら、どう思うでしょうか?
視聴者は間違いなく、「長い……早く本編に入ってくれ」と思ってしまいます。
『起』は、あくまで物語の導入となる箇所です。
物語の核は『承』『転』ですので、『起』は短く構成する必要があるのです。
起承転結の使い方(作り方)を例文で解説(漫画、小説、作文)
ストーリーの作り方をマスターするのなら、起承転結の使い方が分かっていなければ到底無理です。
起承転結の使い方は、漫画、小説、作文すべてに共通します。
漫画、小説、作文は、読み手を楽しませるストーリーを考える必要があります。
ただ闇雲に内容を書き出したところで、読み手は満足してくれません。
読み手を楽しませるのなら、起承転結で構成された作品にすることが重要なのです。
まずは、文章の何が起承転結に当てはまるのかを例文から考えていきましょう。
例文
『起』
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。
『承』
おばあさんが川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。
「おや、これは良いおみやげになるわ」おばあさんは大きな桃をひろいあげて、家に持ち帰りました。
そして、おじいさんとおばあさんが桃を食べようと桃を切ってみると、なんと中から元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました。
「これはきっと、神さまがくださったにちがいない」
子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、大喜びです。
桃から生まれた男の子を、おじいさんとおばあさんは桃太郎と名付けました。
桃太郎はスクスク育って、やがて強い男の子になりました。
『転』
そしてある日、桃太郎が言いました。
「ぼく、鬼ヶ島へ行って、わるい鬼を退治します」
おばあさんにきび団子を作ってもらうと、鬼ヶ島へ出かけました。
旅の途中で、イヌに出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ」
「それでは、お腰に付けたきび団子を1つ下さいな。おともしますよ」
イヌはきび団子をもらい、桃太郎のおともになりました。
そして、こんどはサルに出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ」
「それでは、お腰に付けたきび団子を1つ下さいな。おともしますよ」
そしてこんどは、キジに出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ」
「それでは、お腰に付けたきび団子を1つ下さいな。おともしますよ」
こうして、イヌ、サル、キジの仲間を手に入れた桃太郎は、ついに鬼ヶ島へやってきました。
鬼ヶ島では、鬼たちが近くの村からぬすんだ宝物やごちそうをならべて、酒盛りの真っ最中です。
「みんな、ぬかるなよ。それ、かかれ!」
イヌは鬼のおしりにかみつき、サルは鬼のせなかをひっかき、キジはくちばしで鬼の目をつつきました。
そして桃太郎も、刀をふり回して大あばれです。
『結』
とうとう鬼の親分が、「まいったぁ、まいったぁ。こうさんだ、助けてくれぇ」と、手をついてあやまりました。
桃太郎とイヌとサルとキジは、鬼から取り上げた宝物をくるまにつんで、元気よく家に帰りました。
おじいさんとおばあさんは、桃太郎の無事な姿を見て大喜びです。
そして三人は、宝物のおかげでしあわせにくらしましたとさ。
有名な『桃太郎』の全文ですね。大人になって読み返すと疑問に感じる箇所が多々あると思いますが、ここでは置いておきましょう。
もし、『桃太郎』を起承転結で分けるのなら、例文のような割り振りになると思います。
『桃太郎』の場合でも『起』『結』が短く、『承』『転』が長く構成されているのが分かりますね。
もちろん、『桃太郎』の作者は私ではありませんので、ある程度は起承転結の部分が異なるかもしれません。
しかし、老父と老婆の日常を紹介した『起』から始まり、桃から男の子が生まれた出来事の『承』、その男の子が鬼退治に出かける転換の『転』、鬼退治を退治して戻ってくる『結』という構成で、おおよそは間違っていないと思います。
そのため、起承転結の使い方が正しい模範的な例文といえるのです。
もし、ストーリーの作り方で行き詰っているときは、ぜひ『桃太郎』の構成を勉強してみると良いでしょう。
プレゼンや報告書のようなビジネスシーンで使う場合
起承転結の使い方は、プレゼンや報告書が必要となるビジネスシーンでも役立てることができます。
「え、物語を表現するわけじゃないから、プレゼンや報告書では使えないのでは?」と思う方もいることでしょう。
しかし、物語でなくても、ビジネスの出来事は起承転結に置き換えることができます。
『起』で、現在の状況(市場や会社)を紹介します。
『承』で、『起』を踏まえた上での問題提起を行います。
『転』で、『承』の問題解決方法を提示します。
『結』で、『転』を行った結果を解説します。
このような流れなら、プレゼンで説明するときに相手を説得させることができるでしょう。
ただし、ビジネスでは結論を先に述べなければならない時が多々あります。
その理由は、こちらの記事で解説しています▼
そのため、ビジネスの場合は『結』『起』の順番で説明することになります。
なので、『承』『転』は省いてしまっても構いません。『承』『転』は、問われたときに説明すると良いでしょう。
まとめ
起承転結は、簡単にいえば物語を構成する概念です。
起承転結の使い方をマスターすることで、読み手を楽しませる文章が書けるようになります。
起承転結の考え方はビジネスシーンでも利用することができるため、覚えておいて損はありません。
ただし、ビジネスシーンの場合は『結』を先に述べることが求められます。
また、読み手を楽しませる必要がないレポートや小論文の文章では、起承転結を役立てることができませんので注意しましょう。