人によっては、『文章のゆらぎ』『文字のゆらぎ』『言葉のゆらぎ』など、色々な言い方をします。

 

これらは、すべて『表記ゆれ』を意味した言葉です。

 

『表記ゆれ』を直して統一することでも、文章は読みやすいものになります。

 

文章のゆらぎ『表記ゆれ』とは?

文章のゆらぎとは、つまりは『表記ゆれ』のことです。

 

『表記ゆれ』とは、意味がまったく同じなのに、複数の書き方ができてしまう言葉を指します。

 

『取り扱い』と『取扱』は意味が同じですが、表記が異なっていますね。これが『表記ゆれ』です。

 

しかも、日本語はひらがな、カタカナ、漢字が混在する語学のため、他国以上に『表記ゆれ』が起こりやすいと言われています。

 

もちろん、海外でも『表記ゆれ』は存在します。

 

英語だと、おもに『disc』『disk』のようなスペリングの『表記ゆれ』が生じます。

 

表記ゆれを統一する理由

『表記ゆれ』があっても、文章を読むことはできます。

 

しかし、『表記ゆれ』がある文章は非常に読みづらいです。

 

 

例文

私はナシが好きだ。梨に含まれる食物繊維のおかげで、お通じが良くなったからだ。

食物繊維を摂取するならゴボウのほうが良いと言われるが、私からすればそれはなし。なしの話だけにね。

 

 

これは、『なし』『ナシ』『梨』が使われた典型的な『表記ゆれ』の文章となります。

 

すべて同じ意味なのですが、読んでいると違う単語に見えてしまうのが分かるでしょうか。

 

最後は、おそらく洒落のつもりで『それはなし』と書いているようですが、この『なし』が否定の意味なのか、果物の『なし』なのか、すぐには理解できないと思います。

 

なぞなぞを出しているのならまだしも、相手に読ませようとする文章ではないといえるでしょう。

 

 

例文

私は梨が好きだ。梨に含まれる食物繊維のおかげで、お通じが良くなったからだ。

食物繊維を摂取するならゴボウのほうが良いと言われるが、私からすればそれは『なし』。梨の話だけにね。

 

 

『梨』に統一しただけで、読みやすい文章に変わりましたね。

 

面白いかどうかは別にして、最後のダジャレの『なし』とも区分されているため、相手に意味は通じるようになっています。

 

この例文からも分かるとおり、『表記ゆれ』は読み手の誤解を招きやすいため、統一する必要があるのです。

 

表記ゆれの例文一覧

『表記ゆれ』と一口にいっても、様々なケースがあります。

 

とくに、日本語はたくさんの表現方法がありますので、『表記ゆれ』の一覧も他国と比べて多くなりがちです。

 

『表記ゆれ』の例文に沿って、どんな種類があるのか解説していきます。

 

送り仮名の表記ゆれ

漢字には、送り仮名が必要なものがあります。

 

しかし、中には送り仮名を抜いても意味が通じる言葉もありますね。

 

その違いにより、『表記ゆれ』が発生してしまうのです。

 

冒頭でも説明した『取り扱い』と『取扱』の関係がこれに当たります。

 

実は、『取扱い』とも書くことができるので、この場合は三種類もあるのです。

 

 

例文

『取り扱い』

『取扱い』

『取扱』

 

 

他にも、『引っ越し』『受け付け』があげられますね。

 

 

例文

『引っ越し』

『引越し』

『引越』

例文

『受け付け』

『受付け』

『受付』

 

 

送り仮名の『表記ゆれ』が一番見落としがちなので、気をつけるようにしましょう。

 

文字の種類の表記ゆれ

日本語が難しいと言われるのは、文字の種類が多いからです。

 

ひがらな、カタカナ、漢字の三種類が組み合わさっており、これは世界でも類を見ません。

 

その結果、『表記ゆれ』が発生しやすい原因にもなっているのです。

 

とくに果物や野菜など、漢字が難しい言葉には『表記ゆれ』が起こりやすいですね。

 

 

例文

『りんご』

『リンゴ』

『林檎』

例文

『ぶどう』

『ブドウ』

『葡萄』

例文

『みかん』

『ミカン』

『蜜柑』

例文

『きゅうり』

『キュウリ』

『胡瓜』

例文

『にんじん』

『ニンジン』

『人参』

例文

『たまねぎ』

『タマネギ』

『玉葱』

 

 

他にも、魚や花……こういった言葉にも『表記ゆれ』が多いですね。

 

最初に選んだ『表記』で書き続けるように心がける必要があります。

 

漢字の表記ゆれ

漢字には、発音が同じでも違う意味を持つ言葉があります。

 

代表的なのは、人と『あう』ときに使う漢字ですね。

 

 

例文

『会う』

『逢う』

 

 

『会う』『逢う』は、どちらも人に会うときに使いますが、意味が異なります。

 

『逢う』は『親しい人に巡りあう』場合に用いる言葉であり、会社の部下と待ち合わせたときに使うものではありません。

 

 

こういった漢字による『表記ゆれ』も様々な種類があります。

 

 

例文

『匂い』

『臭い』

例文

『行く』

『逝く』

例文

『回る』

『周る』

 

 

続いては、旧漢字による『表記ゆれ』です。

 

日本語の漢字の中には、昔と形が変わったものがあります。

 

とくに人物名が多いですね。

 

例文

『斉藤さん』

『斎藤さん』

『齊藤さん』

 

 

どれも同じ『さいとう』さんですが、漢字の形が異なっています。

 

このことからも分かるとおり、漢字の『表記ゆれ』とは誤字(書き間違い)で発生するものです。

 

そのため、漢字の『表記ゆれ』を改善する方法とは、語彙を増やすことが第一なのです。

 

ただし、文章を書いていれば、二種類の『表記ゆれ』が発生しても仕方がない場面もあります。

 

 

トイレの臭いは、どうにも好きになれない。とりあえず、香水の匂いでごまかした。

 

 

この例文では、漢字の『表記ゆれ』が起こっていますが、文章として間違ってはいません。

 

なので、漢字の『表記ゆれ』で注意しなければならないのは、間違った漢字を使ってしまうことです。

 

例文の場合は、『臭い』と『匂い』の位置を間違えていたら、すぐに直す必要があります。

 

外来語の表記ゆれ

最後は、外来語による『表記ゆれ』です。

 

外来語を日本語で表現する場合はカタカナ表記にしますが、このときに『表記ゆれ』が起こるのです。

 

 

例文

『コンピューター』

『コンピュータ』

 

 

『コンピューター』と『コンピュータ』がもっとも分かりやすい『表記ゆれ』ですね。

 

外来語を違う言語に正しく直す方法は、実はありません。それぞれの言語には独特な発音がありますので、解釈によってたくさんの言葉が生まれてしまうからです。

 

『ー』を入れるかどうかの違いなら、数えきれないほどあるでしょう。

 

そのため、外来語を文章で用いる場合も、最初に決めた表記を守り続ける必要があります。

 

表記ゆれでも見やすいケース

『表記ゆれ』があると、読み手にいくつもの解釈を与えてしまうので、読みづらい文章になります。

 

しかし、稀に『表記ゆれ』をしていたほうが読みやすい文章もあります。

 

 

例文

「1988年に生まれた僕は、今まで一球入魂の精神で生きてきた。それは、一途な愛を注いでくれた両親の影響もあるだろう」

 

 

この文章には、『1』と『一』という『表記ゆれ』が存在しています。しかし、読みづらいと思う方はいるでしょうか?

 

むしろ、『千九百八十八年』のように漢字で統一してしまうほうが、よっぽど読みづらいと思います。

 

四字熟語を『1球入魂』と表記するのもおかしな話ですし、このような場合は『表記ゆれ』を直す必要はないでしょう。

 

日本語で数字を表現するとき、二桁以上になると『十』や『百』といった漢字を入れるため、現代人には読みづらい表記なのです。

 

そのため、文章で数字を入れるときは、状況に応じて使い分けることも必要かもしれませんね。

 

まとめ

『表記ゆれ』は、突き詰めて言えば誤字です。

 

間違った言葉(違う言葉)が文章に散りばめられていたら、読みづらいのは当然です。

 

『表記ゆれ』が発生していないか、文章を書き終えたらしっかりとチェックする必要があるでしょう。

 

『表記ゆれ』が起こりやすいのは、以下の四つです。

 

  • 漢字の送り仮名をつけるとき
  • 文字がひらがな、カタカナ、漢字で表現できるとき
  • 発音が同じ漢字を使うとき
  • 外来語をカタカナ表記にするとき

 

これらの言葉を書くときは、『表記ゆれ』を意識することが大事です。

 

そうすれば、文章のゆらぎに惑わされることのない、読みやすい文章となるでしょう。