文章を書くうえで『体言止めは使わないほうがいい』と耳にします。
それは間違ったことではないのですが、反対に体言止めが活きてくる文章もあります。
今回は、体言止めの意味や効果について解説します。
体言止めの効果とは?
体言止めとは、語尾の最後が名詞で終わっている文章のことです。
例えば、『豚に念仏』『鬼に金棒』『伝家の宝刀』は体言止めを使ったことわざになります。
では、どうして体言止めを使うのでしょうか?
もし、『豚に念仏』を体言止めで表現しなければ、『豚に念仏を唱えても意味がありません』という文章になります。
意味は同じですが、二つを比べる印象がずいぶんと違うことが分かります。
『豚に念仏』は情報が少ないため、何を伝えたいのか明確にされていません。しかし、そのおかげで文章に余韻を持たせることができます。
余韻が生まれたことで、どういう意味なのかイメージを膨らませることができるのです。
他にも、文章にリズムを持たせる効果があります。
例
すっかり日が暮れてしまった。
森は静寂に包まれており、一寸先は闇だった。
僕はここから抜け出すために、がむしゃらに走った。
この文章も意味は通じますが、すべての語尾が『た』で統一されており、間延びした印象を受けます。
ここで体言止めを使うと、文章にリズムを作ることができます。
例
すっかり日が暮れてしまった。
森は静寂に包まれ、一寸先は闇。
僕はここから抜け出すために、がむしゃらに走った。
どうでしょうか。途中の文章に体言止めを用いたことで、全体のリズムが良くなっていると思います。
なので、文章に余韻やリズムを持たせたいときに体言止めを利用すると良いです。
『こと』『ため』も体言止め
体言止めは、名詞で終わる文章を指しますが、名詞の中には『形式名詞』と呼ばれるものもあります。
この『形式名詞』とは、『こと』『ため』を指します。
つまり、『ここでは、喋らないこと。』『廊下は走らないこと。』も体言止めに含まれてます。
『これは、君のため。』『勉強しているのは、受験のため。』も体言止めなのです。
ビジネス文書や報告書は箇条書き
ただし、体言止めは無暗に使うものではありません。
体言止めばかりの文章は、非常に読みづらいです。
例
その刹那。
背後から姿を現し、懐から出てきたのはナイフ。
刺客の存在は、見渡すだけでも五人。これは、絶体絶命。
緊迫した状況を体言止めで表現しようとしているみたいですが、残念ながら失敗しています。
むしろ、体言止めのせいで口数が少なくなっている話者のほうが刺客に思えてしまいます。
このように、体言止めは多用してしまうと読み手に伝わりづらい文章となります。
ただし、体言止めのほうが情報を明確にできる場面が一つだけあります。
それは、ビジネス文書や報告書といった文書です。
例えば、ビジネス文書に長文の文章が書かれていたら、相手はどの情報を覚えておけば良いか、一目では判断しづらくなります。
例
いつもお世話になっております。懇談会ですが、日時は17時30分から始めたいと思います。場所は〇〇ホールです。以前の合同集会で利用したホールとなります。参加費は5000円です。よろしくお願いいたします。
意味は通じるのですが、この場合は体言止めを使った箇条書きで表現したほうが情報が明確になります。
例
いつもお世話になっております。こちらが懇談会の詳細となります。
日 時 17時30分
場 所 〇〇ホール
参加費 5000円
皆様の参加、心よりお待ちしております。
さきほどより、必要な情報が明確になっていると思います。
体言止めは、表記としても利用することができるのです。
まとめ
体言止めは、文章に余韻を持たせたり、リズムをつけることができます。
ただし、使い過ぎると言葉足らずになりがちなので、文章の構成を考えて使うようにしましょう。
ビジネス文書や報告書で内容を明確にする場合は、体言止めを使った箇条書きのほうが見やすくなります。
他にも、『こと』『ため』なども体言止めの文法となりますので、文書に用いると効果的に使うことができるのです。