漢字には、似たような言葉がいくつかあります。
『前述』もそんな漢字の一つでしょう。
『前述』の意味や使い方、『先述』『後述』『前出』の類語との違いを例文も交えて解説します。
前述の意味や使い方
『前述』とは、前に述べた内容を意味する言葉です。
文章はいくつかの文から作られたものであり、必ず前後が存在します。
その『前』の部分を指し示すときに使う言葉が『前述』となるのです。
使い方は、以下のとおりになります。
例文
古代エジプトでは、現代ではありえないような生物がいたのではと考えられています。
神話として片づけられがちですが、実在したのではないかという記述も見つかっているのです。
前述にあるように、世の中には摩訶不思議な生物がたびたび目撃されています。
そういった生物をUMAと呼ぶのです。
この例文での『前述にあるように』とは、『古代エジプト』に実在したとされる未確認動物の内容を指します。
ここで『前述』を使わず、わざわざ『古代エジプトの未確認動物が目撃された話をしましたが……』と書き出すと字数も長くなりますし、くどくどした文章になってしまいます。
こういった場合、『前述』を使って文章を短くしたほうが見やすくなります。
前述は論文やレポートで使われる(前述にあるように、前述しましたが)
『前述』は、論文やレポートでよく使われる言い回しです。
論文でもレポートでも共通していえることは、文章が長くなるということです。
そのため、どこに何が書かれているのかを明確にしなければなりません。
ときには、前に記した内容を引っ張り出すことも必要となります。
そんなとき、『前述』という言葉が役立ちます。
『前述にあるように』『前述しましたが』と書き始めれば、前章の繋がりを持たせることができ、無駄な字数を減らすこともできます。
ただし、よく間違いがちなのは『前述で述べたように』と書いてしまうことです。これは二重表現となりますので注意しましょう。
前述と前出の違い
『前出』とは、文章などでそれよりも前に示してあることを意味します。
『前出の件で』『前出の登場人物』といった使い方ができます。
そのため、『前述』と違いはなく、ほぼ同じ意味となります。
ただ、『前述』だと範囲が広いときでも使えます。
例文にも記していますが、『前出』は『件』や『登場人物』など、対象が絞られているときに使うのが一般的となっています。
前述と後述の違い
『後述』とは、後に述べた内容を意味する言葉です。
つまり、『後述』は『前述』の対義語となります。
前に記述した内容が『前述』なら、後に記述した内容が『後述』となります。
『後述』の場合は、『後述します』という文章の締めで終わります。
前述と先述の違い
『先述』とは、先に述べたものを意味します。
これは、『前述』の類語となります。
示したい文章を『前』と表現するか『先』と表現するかの違いなので、ほぼ同じ意味です。
ただ、『先述』だと過去に起こった出来事を指す言葉として使われることが多いです。
『前述』の場合は過去ではなく、あくまで文書の内容を取り上げる言葉となります。
前述の類語
『前述』の類語は、たくさんあります。
すでに登場していることを意味する『既出』『既存』『前陳』も類語となります。
すでに紹介していることを意味する『先述』『先に言及した』『先ほど登場した』といった言葉も類語といえるでしょう。
また、『前出』や『上述』『上記』も類語と呼べますね。
他にも、『前段』という言葉があります。
こちらも性質としては似ていますので、類語と呼んでもいいかもしれません。
前述の例文
最後に、『前述』を使った例文を紹介します。
すでに、使い方のほうで解説はしていますが、ここでは『上述』との違いを説明しておきます。
例文
上述しましたが、地球温暖化は他国の問題だけではありません。この国もまた、対策を練る必要があります。
これは、一人だけが行っても解決できません。一人一人が自覚をもって行動しない限り、温暖化を止めることはできないのです。
もちろん、この例文では『上述』と使っても問題ありません。
ただし、これはあくまで横書きなので意味が通じます。
もし、これが縦書きの文章ならどうでしょうか?
縦書きの文章で『上述』や『上記』と書かれていても、どこに目をやって良いか分からなくなります。
しかし、『前述』なら横でも縦でも意味が通じます。
『前述』には、こういった使い方もできるわけです。
まとめ
『前述』とは、前に述べた内容です。
類語はたくさんありますが、『前述』は論文やレポートのような文書で使うのに適した言葉となります。
対義語の『後述』と組み合わせて使うことができるため、類語の中ではもっとも利便性が高い言葉かもしれませんね。
『前述』は話し言葉でも使われますので、ぜひ上手に使えるようになっておきましょう。